連載小説「いい加減」31 大和川人

「最善の方法なんだ。俺はそう決めたんだから受けてくれ」
「こんな馬鹿な話聞いたことないよ。ねえ、奥さん…」


 俺はこのときつい‘奥さん’と言ってしまったんだ、当たり前のことだがね…そんな説明つきでフーさんはそのときの状況を語るんだ。
「奥さん、どう思っているんです?」
「藤田さん、酔ってる人のことなんか真に受けてどうするの?」
「おい、お前、俺はな、酔ってもいないし不真面目でもない。真剣に後のことをフーさんに頼んでいるんだ」
「あのね、狭間。お前らの意見一致させてから言ってくれ、迷惑だよ」
 俺はそのとき多少呆れながらも成り行きに面白みを感じていたんだ。
「靖子、お前、藤田のこと、嫌いではないだろ?」
「好き嫌いの問題じゃないでしょ。呆れっぱなしの甲斐性なしのあんたに愛想尽きて離婚するのよ。そんな人の意見聞いてどうなるの?」
「俺は家庭生活に向いてないし失格だよ。それは分かっている、だから、お前や子供の前から姿を消すことにしたんだ。だがな、何でも置き土産というものがあるだろう。それがこの靖子だよ」
「おい、靖子さんが俺への置き土産か?呆れた奴だな」
 俺はわざと語気を荒めたが、達には一向に効き目がない。
「それでいいじゃないか。そんなに悪い置き土産じゃないだろ」
「お前、言うことに事欠いて、そんなこと言っていいのか?」
「いいも悪いも、正直な俺の願いだよ。靖子も内心喜んでいる。そうだよな、靖子」
「物のやり取りじゃあるまいし、呆れてものも言えない。第一藤田さんに迷惑なことじゃないですか?」
「見てみろ、この顔。迷惑なんて顔じゃないよ、な、藤田」
「呆れた人…ね」
 俺は不覚にも言い返せなかった。顔がにやけていたのか、どこぞに受け入れる雰囲気を漂わせていたのであろう。成り行きは狭間の都合どおりに進んでいく。
「これで結論が出たな。万々歳だ」

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