連載小説 いい加減 33 大和川人
「魚心あれば水ごころか?」 「全くそうなんですよ。焼き鳥屋も水商売ですからね、池原さん」
「遠くの親戚より近くの他人とも言う。焼き鳥屋、彼女に惚れたのか、それとも逆かな」 「図星ですよ。実際どちらがどうか分かりませんでしたがね」
「寄らば大樹の陰、よくある話じゃないですか。厨房の恋か?」 「…なんですよね」
「で、どうした?」 「どうもこうもありません。俺にも意地がある。だから、切羽詰まったというか追い込まれたというか、あるとき『靖子さん、狭間が言ってたようにあんたのこと心底好きなんだ。抱かせてくれないか』そう言ってドライブに誘ったんだ」
「それは良かった」 「ところが良くなかった。何とか承知してくれて、ホテルに行って一緒にバスにも浸かってね。細かいことは省略するが…お互い全裸でともかくベットに並んで天井を見上げた。じっとしていても仕方ない。黙って横たわっている彼女の上に跨って、左手で身体支えながらそう右手で息子を持って振るわせる。彼女は目を瞑っているだけ。まあ好きにしてくださいというところだな」
「観念して身を任す。殊勝じゃないですか?」 「まあまあ、わたしの話聞いてくださいよ。それはそれでいいのだが、どうしてかなかなか息子硬くなってくれない。根元を握ると多少硬くなる。でもね、先っぽを毛に覆われたクレバスに近づけると元気をなくす。焦りますね。気持ちが早やっているのに息子がだらんとなる。しばらくそうしていたが、左手がしんどくなって、ベットから降りてビールを飲んだんです。息子に改めて元気を出してくれるように祈る気持ちでね。世の親父が息子に頭があがらんのはこのセイだとね、ひとり身の俺が思うのはいつもこのときだよ」
「…冗談はともかく、なかなか思うとおりにならない。辛いね、こんなとき」 「あれこれ考えながら、しばらくテレビをぼんやり見ていたんです。『どうしたの大丈夫?できないなら私、お口ででも助けてあげるわ』とね…」
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