連載小説 「いい加減」大和川人 34〜43

「…そんな優しい言葉のひとつも言ってくれないかな、なんて思っていたが全く反応がない。むしろいびきが聞こえてきそうな雰囲気でね。実際眠ってしまっていたみたいなんだな。素顔を見ると、どうも違うんだな」

「何が違うってイメージだろ。わたしにも経験があってね。どうしてもおっぱいのところが貧弱というか、今では禁止用語だが・・・・・でね。全くその気にならない女がいたよ、寒々しくて。そういうことじゃない?」

「息が臭いのやワキガは萎えてしまうよね。自分のことは分からんから勝手だがね。彼女美人なのに目を瞑っている顔が欲情を醒めさせるというか、その気にさせないんだな俺には。それに気付いたが、いつまでもそんなことしてると、拗ねてるようで嫌だから、またベットに上がってね。『目を開けて僕を見つめてくれない』と言ったんだ。そしたら、何と言ったと思う。これだけは一生忘れられないね」

「さて、答は何でしょう?」

「『藤田さんの顔を見ると主人の顔になって嫌なの』だとさ。これ、ほんとと思う?あいつと俺は似てないと思うんだけどね…」

「わたしは知らないが、よほど狭間という男の顔が嫌になったんだね。多分それはそのとき焼き鳥屋の親父の顔がよく見えていたからじゃないかな。それにしてもよく憶えているものだ、そのときのこと。で、どうした?」

「いやー、そうすればまだやれるかも知れないと思ってね。靖子さん、お願い、目を瞑ってじっとしてていいから、あそこ見せて、言ったんだ」

「なかなか正直だね。男はみんなあそこ見れば興奮する」

「そこだけは素直に見せてくれた。俺も少しはいろんなのを見てきたが、驚いた。広げてみると実にピンクに輝いていたね。二人の子供産んだなんて信じられない思いがしたよ」

「それは良かった。で、どうした。見ただけか…。ははーん、これだな、舐めたんだ、そうだろ?やっとたどり着いたか?」

「そうなんだ。俺は思わずむしゃぶりついたね。彼女はなすがままにしてくれた。こうしてくれる方が良かったのか、初めからそう望んでいたのか、ともかく喜んでくれてね。声もあげるし…」

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「そういう女もいるんだ。入れられるのは煩わしいが、クンニリングスだけは許すという。むしろクンニだけ求める、そんな女もいる。楽だし汚れないし、気分はさほど変らない」

「池原さんも相当経験あるね」

「いや、それほどでもないけど、最近これが男のひとつの活路と思えてきたんだ」

「そんな自信のないことでどうします?」

「いや、年相応ですよ。それからどうしました?」

「この際だから言えば、味も悪くないし潤いもあった。今はどうか知りませんがね…あの当時は」

「その時いくつだったの?」

「多分俺が四十六、彼女は四十だったかな」

「ほんと? そんな昔はそれでいいとして、店オープンしたとき、もう一年ぐらいなるね。ずいぶん手伝っていた。そのとき、また同じこと言ったんだ、そうですね」

「まあ、似たようなことではあるが…」

 お互い酔って遠慮なくしゃべりあったことでこれは何日かにわたった話。

ところで、これをお読みのあなたは男同士であってもそこまで話すものかねと疑問の念を持たれるかもしれない。が、普通の男はそんな他愛ないが最も切実である性、つまりセックスのことで一喜一憂していて、実際に忌憚なく本音を話しあえる男たちもいるのである。

フーさんには悔しさと未練があった。男の五十前息子がいきり立つのは当たり前。

そんな内なる奔放をどうなだめるのか、なだめているのか。総て自身との戦いなのだ。この戦いがいつまで続くかは個人差が大きし、ほとんど戦いも知らずに過ごしてしまっている平穏な男もいるが、そんな男たちには理解しがたいことである。

だが、フーさんはずうっと戦って来た。大部分の男たちは3日か4日か、それとも1週間辺りで押し寄せてくる怒涛を幸いにも処理できている。受け止めてくれる妻などの相手がいる者には日常のひとコマにすぎない。

だが、フーさんのように相手がいない者には最大の問題事である。通常、やむなくオナニーで処理している。多少は侘しいがね。

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 ちょっと断っておくと、フーさんが狭間夫婦の子供と初めて会ったときも酔っ払っていたのであろう、姉と弟と言っていたが、寿司を食べられたとき実際のとおり兄と妹に間違いが正されている。が、これはママとの曰く因縁とは何の関係もない。

さて、フーさんには悔しさと未練があった。なぜフーさんがひとり身を通してい

るのかまだ聞いていないのだが、ひとり身が息子の処理をするのに最も都合のいいのは、言うまでもなく都合のいい女の存在である。そのときフーさんにはそんな女が居なかった。

だから、狭間の置き土産である靖子は格好の据え膳というか、願ってもない賜物、垂涎の的。降って沸いた幸運である。下種か下劣か、下世話な話であろうが何であろうが、フーさんには彼女しか受け止めてくれそうな女がいなかった。いったん網に入ったと思えるだけにかえって切迫感が強い。一度の失敗で諦める気になれないのは極めて自然である。

ひとり身に慣れてきた間は自分を慰めていて済んだだろうが、失敗したとはいえ一度は言いなりになってくれた女である。このまま見逃してしまう術はない。生身を求める執念が一層燃え上がったことは論を待たない。

焼き鳥屋への紹介は、靖子を経済的に立ち直らせるに役立ったが、店主との成り行きは予想外であり、腹立たしさと悔しさと後悔が入り混じり、何がなんでも何とかしたい思いが募るばかりであった。

彼女の気持ちが焼き鳥屋に向かっていると思い込んだフーさんは、却って彼女見たさに足繁く通うことになる。狭間が譲ってくれたとき何で直ぐに手を付けなかったのか、邪魔者が出現する前になんでしっくりした関係にしようとしなかったのか、そんな後悔に苛まれながら焼き鳥屋の暖簾をくぐる。

表情や態度に出るのであろうか、店主はおろか彼女もあまりいい顔をしていないように見える。邪険にされているようにさえ思える。フーさんは飲んでいても美味くない、気分もすぐれない。

‘おいどうした、浮かぬ顔して?’と馴染みの客たちも言ったり囁くようになる。

気まずいばかりだし、気分が晴れない。何しに来ているのか、他者もいぶかる。

 彼女が遠い存在にさえ思えてくる。ものに出来ていない負い目も感じる。

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恋しさがつのる。恋するということはこんなにも自分が処しがたいのか、フーさんはあらためて苦悩する。

どこかに打開の道はないか。

はっと我に帰る。狭間に連れられ何度も足を運んだ家に行けばいいことではないか。まさか逃げも隠れもしまい。フーさんは彼女が帰ってくる時間を見計らい家の近くに佇むという切羽詰った行動に出る。だが、物事はなかなか都合良くいかないものである。

早い時間に戸口を叩けば、子供に‘おじさん、お母さんまだだよ’と言われるし、門口で帰ってくる彼女に声をかければ‘あら、どうしたの?用があるなら店で言ってくれれば済むでしょ、見っともない真似しないで。わたし直ぐ寝ないと身体もたないもの’そんな声が聞こえてくる。佇みながらもそんな想像が働く。

簡単なのは彼女が昼間のパートを終えて帰宅したのち焼き鳥屋にでかける前に捕まえればいいのであるが、そんな慌ただしい昼間に彼女と結ばれる状況を作ることが無理なことは明らかである。

いかにすれば、思いを果すことができるのか。 

“どうしてもゆっくり話したいことがある。時間と場所は任せるので会ってくれ” そう認めた手紙を郵便受けに入れることにした。

 数日後、“あさって休みだから家に来てくれてもいいよ”焼き鳥屋で耳に囁かれる。

どれほど嬉しかったことか、有頂天になって子供のように嬉々となり心が躍る。

 前日ほとんど眠れなかった。俺はほんとうに彼女に惚れているのか、フーさんは何度も自問した。だが、分からなかった。

これは当たり前の現象である。惚れているという感情と女とそうありたいという欲情は判別し難いものなのだ。それまでさほど惚れていなくても希望が見えてくると惚れているという感情が沸き起こり、獲物が現実味を帯びてくれば獲得したいという欲求が強まり、それらが識別できない混沌とした感情を呼び起こすものなである。

フーさんはそんな幸せな寝つかれない高ぶった前夜を過ごした。

午後2時前仕事を休んで彼女の家を訪れる。

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2時間もあれば十分とフーさんは計算していた。商売女とホテルで会うときは事が事務的に進んで2時間の持ち時間は長いものである。

「仕事休んで来るなんてどうしたの」

靖子が笑顔で出迎えてくれる。“休まないと会えないじゃないか”と呟く。

ちゃぶ台に手料理かスーパーで求めたものか、それとも焼き鳥屋の残り物か、酒の肴が並べられている。

「ビールにしますか?」

予想外の優しい応対にフーさんは嬉しさをかみ締め胸が締め付けられる。

靖子は俺に惚れているのか?悩みは杞憂だったのか?

昨夜の夢想が現(ウツツ)であると思わない訳にいかなかった。

フーさんはビールを注いでもらう。

「藤田さんにいいとこ紹介してもらって助かっているの。でもね、店ではあまり馴れ馴れしい態度とれないでしょ」

「馴れ馴れしいなんてそんなこと要らないだろ。普通にしていいのに何か気遣っているみたいだな。それどうして?」

「いえ、外の人と別段変りないわよ。でも、ちょっと気を遣ってしまうの」

「俺の何かと思われたくないとか、そう考えているの?」

「そうじゃないけど。橋野さん(焼き鳥屋)には藤田さんの彼女ということになっているでしょ」

「誰も知らないことだし、気付かれるようなことになっていないだろ」

「そうだけど…」

「何なんだ? それより…言いにくいが…橋野のオヤジ、あんたに惚れているんだろ?」

「そんなことないわよ。誰がそんなこと言ったの?」

「誰ということないが…。店の客ができているのじゃないか、なんて言っている。俺はそうは思っていないがね…」

「あらっ、それほんと?」

 いかにも驚きを隠さない靖子にフーさんは白々しさを感じたが、後のことがある。

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肝心なのはわが思いだ。心を穏やかに保たなければ…。

「嫌だ、藤田さん、それ真に受けているんでしょ?」

「俺はそうは思っていない、噂を耳にしただけ…」

「嘘だわ、それ。何で気難しい顔しているんだろって、思ったことあるもの。焼き鳥じゃなくて焼餅焼いてくれているの?」

「焼き餅?さあ、ひょっとして焼いているのかな」

フーさんは靖子に惚れていることを分かってもらいたいと思い、否定しなかった。

「誰がどう言っているか知らないけど、橋野さんとはお互い何もないわよ。店主と従業員。仲良くしていかないと店もたないでしょ。当たり前のことだもの。必ずそんなこと言いたがる人いるのよ」

「それはそうだ。俺もそう思っている。だが、靖子さんが仲良く仕事している姿見れば焼き餅みたいな気持ちになる。正直な思いだよ」

「そう言ってくれれば、嬉しいわ」

「あんたも飲まない。ビール?」

「いただいてもいいけど…」

「俺は今日靖子さんの前で自分をさらけ出したい、そう思っている。この前はすまなかった。いつもはあんなじゃないんだ」

「何の話?」

「いや、つまりこの前のこと」

「この前って?」

「嫌だな、ホテルへ行ってくれただろ」

「そんなこと…店で会っているから、そのときの何かと思ったわ」

「男は不首尾に終わったときはいつまでもそれが気になってね」

「…そうらしいわね。聞いたことある」

「で…靖子さん、協力してほしいんだ」

「協力っておかしな言い方ね。どうしてほしいの?」

「思いを遂げたい。ずうっとそればかり考えてきた」

「主人が言い残したことでもあるし、わたしはそれで構わないと思っているのよ」

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「そう言ってもらえば助かる」

 お互い目前の肴を摘まむ。

「今でもいいね」

「上の子は仕事だし、下はクラブ活動で遅いから…」

「じゃ、いいんだね」

「フーさんて案外なんだ。海千山千じゃなかったの」

「そんなつもりだったんだがね…」

「ちょっと待って、布団敷くから…」

 そのときフーさんはいそいそと襖を開け隣り部屋に行く彼女の後姿を夢かと疑ったんだそうだ。しかも、戻ってきた彼女が風呂はどうします?と聞いたんだとさ。

 事の前に身を綺麗にするのはエチケット、事の後にも身奇麗にしないといけないな、なんてこと思いわたしは苦笑いした。

「じゃ、お願いしようかな」

 余裕の気持ちでそう言ったらしい。

“一緒に入ろうか”と言ったかどうか、わたしは聞きそびれたし、フーさんは何も言わなかったので、それは永遠に分からない。

 入浴シーンは想像に任せざるをえないが、敷かれた布団に寝たそうだ。

 それに季節が知れないから、そのときの濡れ場あまり鮮明にお伝えできないが、およそ以下のような様子だったらしい。

  フーさん同じ失敗を繰り返してはならないと思い、素直に彼女にかぶさっていく。

彼女もフーさんの愛撫になすがまま。乳房を吸われてくすぐったいのを我慢してじっと笑いをこらえるしかない。こうなった限りどうなったっていい。喜こばしてくれるのを待つしかない。まな板の上の鯉というのも存外気楽なもの。

昨夜遅くまで仕事したせいか眠気が襲ってくる。眠ってはいけないのかそうでないのか混沌となる。

彼女が意識を無くしている間のフーさん、どうであったのか。

フーは必死であった。彼女が眠りに入っていることに気付かない。上になり彼女に体重をかけないようにしながらいかに挿入すればいいのか。

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ところが、フーさん、自分はずいぶんと興奮しているのにどうしてかまたもや息子がハッスルしない。神経をそちらに一生懸命集中しても普段のまま頑として姿を変えない。男は見ないでもそれは分かる。緊張しない。要らぬときに膨張するのに何を拗ねているのだ。

 フーさん、息子を叱ったそうだ。叱られて息子はますます怖じ気づいたのかもしれない。

「ごめん、靖子さん、おかしいのだ。ちょっと触ってみてくれないか?」

「触るって?」

「いや、大きくならないんだ」

「どうしてでしょ?」

「…それが分からないから難儀している」

「じゃ、無理しなくてもいいのじゃない」

「こんなとき無理しなくてどうする? 頼む、触って」

「仕方ないわ、触ってあげるから上向きになれば…電気点けるね」

 垂れ下がっている紐を引っ張る。

 フーさんは蛍光灯のぶら下がった天井を見上げる姿勢になったらしい。

“久しぶりだわ。男の人のこれ見るの”と言いながら、そうしてくれたらしい。

 だが、フーさんには痒いところに手が届くという風ではなかったらしい。義務的に触るだけでまるで熱意がない。

「ちょっとこう握ってね、上下させてくれないかな」

 そう頼んだらしいが、彼女の事務的な仕草では息子も白けたままであったんだね。

「駄目だ、あそこ見せてくれないか」

 切羽詰まったフーさん、また同じことを言ったらしい。全裸で座る彼女を少しこちらに向けて横たわったまま洞穴の穴を覗くように見た。が、何も見えない。

「ちょっと足を広げてくれない」

 右手で息子をしごきながら彼女のクレバスを左手で押し広げて見ると思ったとおりピンクに潤んでいた。だが、息子は依然として頑なであった。

 フーさん、起き上がり再び抱きついて強引に口付けに及んだ。

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思い切り彼女の舌を吸い込み唾液を吸う。彼女は多少あがなったが受け入れ首に両手をまわし抱きついてくれる。乳房と乳房が圧迫される。

フーさん、やっと興奮を覚えるうちに息子が隆起しているのが感じられる。

よしここだ。「大丈夫だ、横になってくれ」そう言って彼女を横たわらせ、右手で息子を握り上下させながら跨った。

だが、その途端にどうしたことであろうか、快感とともに中途半端に緊張した息子の先端から精液がだらしなくどろどろと流れ出した。その体液が彼女の太股に落ちる。

「あら、いちゃったの?」

 フーさん、呆然自失。“溜まり過ぎていたのか”自問する。

言葉がなかった。どどっと横たわり息子の先端を右手の掌で包むのが精一杯であった。

 彼女は黙って股を拭き身繕いをする。ティッシュを差し出してくれる。せめてもの哀れみか? 

 フーさんには信じられない出来事であった。こんなことはかってなかった。

「悪かったな、思いどおりにならなくて…」

「それはあなたの方でしょ。どうしてだったの?わたしが男の人に慣れてないからなのかな」

「そんなことないと思うけど…焦ったんだね。焦ることないのに…」

「相性が悪いのかしら」

「いや、俺が下手なんだ。いや、あんたに惚れすぎたのかな」

「また挑戦してもいいのよ」

 優しい靖子の口吻である。

それからしばらくビールを飲みながら焼き鳥屋のことなど雑談したフーさん、“靖子さんのあそこ綺麗ね。大事にしてな”そう口ごもって家を出たんだそうだ。

西に傾いた太陽はまだ煌々と照っていたらしい。

 それがきっ所でもあったのか、2度も失敗したフーさんは名古屋方面に仕事の口が見つかり大阪を離れた。

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それから、二十年近い歳月が流れこの地に戻ってきたとき、藤田さんは旧姓を知らない狭間靖子が居酒屋を開くらしいということを聞きつける。

再会したのはフーさんには懐かしい昔馴染みの喫茶店。様変わりしないこんな暇そうな店がよくやっていけるものだと嬉しさをかみしめつつ同じ風貌を靖子に重ね合わせてしばし見とれる。

“変らないね”お互いの思いだったらしい。

靖子を懐かしく眺める。お互い過去を手繰りつつの四方山話に打ち解ける。

このとき、フーさんは靖子の居酒屋開店を応援する数人のグループに加えてもらい開店準備に力を貸すことにする。フーさんは店の看板やらの設置、内装にも知恵を与え大いに支援した。そして、開店早々からの常連になった。

それほどに年月の隔たりを感じなかったそうだ。昔馴染みというかそんな知り合い同士は時間を一挙に縮めるものであるらしい。

「藤田さん、また彼女に迫ったのでしょ」わたしは聞かざるをえなかった。

「そうなんだ。責任を果していないというか迫ってやらないといけないと思う気がおきてね。三度目の正直、二度もできないまま終わる女をこの世に残しておいてはいけないとも思ってね」

「彼女に色男がいるとか思わなかったの?」

「会えた悦びが先立ってかな、何も思わなかった」

 大阪を離れていたときフーさんが女と暮らしたことやスナックの女と馴染んだり、ソープランドに通いテレクラで知り合った女とも懇ろになったことなど一人身の男なら普通にすることをしてきたと問わず語りに話してくれる。

「で、ママが言ってたんだが…どうなの?」

わたしはやっと肝心のことを聞く。

「あれね、ママよほど池原さんに気を許しているね」

「そうでもないが、誰もいないときにしゃべるんだ」

「そうママとさくらで二人っきりのときにね、わたしのあそこまだ見たい? 酔ってママが言ったんだよ。これほんとの話、信じられないだろ。それにしてもよく憶えていたもんだ」

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